忍者ブログ

創作物と物置

FF14関連創作物と中の人がロドストに置くとこっ恥ずかしい物を置いています。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

大迷宮バハムート 邂逅編 ~ 序 ~

「しかし腕を上げたものだな、ナナモ女王陛下も大層お喜びだ。また、向こうの内輪の不手際も有った様で貸しを作る事も出来た。これでウルダハとの交渉もスムーズに運ぶだろう。」
メルウィヴ提督は満足そうにワイングラスを揺らしながら首だけを斜め後ろに向けて語りかける。

その視線の先には片づけを終え、手を拭きながら厨房から歩いていくる一人の料理人が居た。

「お褒めに預かり光栄です。」

彼のその短い返答には、彼女の後半の言葉、生臭い政治交渉の話には全く興味が無いという意図が含まれている事は容易に見て取れた。

「まぁ掛けたまえよ、アーサー。」

そんな彼の表情にメルウィヴはやや苦笑を浮かべながら椅子を勧める。

濃い褐色の髪を無造作に後ろに流したヒューランの青年は、やや緑掛かった瞳を彼女に向けながら腰掛けた。額にはおよそ料理人らしからぬ大きな傷跡。


アーサー・ラファエル、それが彼の本名であり、三国を又に掛ける自由騎士こそが彼本来の姿である。


「しかし貴兄の剣の腕前は三度目覚めた三蛮神を討ち倒すのだから言うまでも無いが、鍋を振らせてもつくづく大した物だな。」

「いや、自分の腕前などまだまだ半人前です。提督もよくご存じでしょう?うちの流麗な腕利きのエレゼンを。彼女に比べたら自分など。」

「あぁ、アルティコレートか、よく知っているよ。彼女は学者としても優秀だそうだな。」

「ええ、彼女とは冒険を共にした事も有りますが、自分の知る中で5本の指に入るヒーラーです。それはそうと話しとは・・・?」

そう、メルウィヴ提督から晩餐会の後に時間が取れないかと予め打診を受けていた。

彼は黒渦団の所属となっているが、実質的には自由な活動を許されている。ただそうは言っても提督直々に話を聞きたいと言われれば流石に無視する訳にもいかない。

「ああ、そうだったな・・・。年が明けてから貴兄達冒険者が例の・・・、そう、メテオ探査坑に足を運んでいると聞いてな。」

「ええ、確かに。」

「黒渦の長としては、周辺警備に一等甲兵を割いてもいるのだ、話しを聴く権利位は有っても良いと思っているのだが。跳ねっ返りのアリゼーときたら連絡の一つもよこさんのだよ。」



「・・・・・・。恐らくそれには理由が・・・・・・。」



一瞬の沈黙の後、彼はゆっくりと口を開く。



「バハムート・・・・・・。」



ガタッ!!


その名を告げた瞬間、彼女は弾かれた様に立ち上がる。



「なっ・・・・!? な、なんだと・・・・。あの第七霊災の忌まわしき記憶の根源が其処に在るというのかっ!!」

「あれはバハムートと見て間違いないでしょう・・・。但し、活性状態には無いと思われます。そもそも完全な形で存在しているのかすらはっきりしません。」

「どういう事か?」

「我々があそこで目にしたのは途方もなく巨大な翼と右手のみでしたから。」

「とはいえ、我々の領土内での話だ、知らぬ存ぜぬでは済まされぬ。調査として黒渦団一個大隊の派遣も考えねばなるまいよ。」

アーサーの受け答えの様子から可及的速やかな対応が必要ではない事を見てとったものの、彼女にとって厄介な案件がまた一つ増えた事は間違いない。

「提督、率直に申し上げると黒渦団の派遣は避けるべきです。」

「理由は。」

「探査坑内のエーテル濃度は異常です。我々とて週一度、数時間の調査が限界、加えて偏属性クリスタルの影響か異常に狂暴化した魔物の巣窟です。何よりも古代アラグの遺した侵入者を排除するシステムの前に悪戯に犠牲者を増やすだけです。」

「5000年以上の時を経ても尚、未だ機能しているアラグの遺構があそこにも・・・?!」

「ええ。」

ガレマールが復活させたアルテマウエポン、我々が古代迷宮と呼んでいるクリスタルタワー等、古代アラグ帝国の技術が自分達の想像を遥かに上回る事を知るメルウィブには、アーサーの進言が至極妥当な物である事を理解した。

古代アラグの力を前にした時の自分たちの無力さを改めて思い出したのか、蒼白さを含む彼女の肌が紅潮するのを見る事は無いが、噛み締めた唇と机に置かれた握り拳の震えが提督としての悔しさを表している。


「止むを得まい・・・。我々として足を踏み入れる事がままならぬ以上は、尚更貴兄から詳しく話を聞かない訳にはいかぬな・・・。聞かせてくれ、そこで貴兄が見た物、感じた事、得た物、その全てを。」



アーサーは手元に有ったグラスの水を一気に飲み干して一つ大きく息をつくと、メルウィブを真っ直ぐに見つめながらゆっくりと口を開いた。





「分かりました。話しましょう、かの大迷宮で私が仲間と共に戦った日々の記憶を。」


ー 続く ー
※ 3/28 一部登場人物について許可を頂きましたので、人物名を加筆修正致しました。
PR

大迷宮バハムート邂逅編 ~ 未踏の地へ ~

ワインポートの街を出てすぐ、目と鼻の先に「カストルム・オクシデンス」を望む一見何の変哲も無い場所にそれは有った。人一人身をかがめて入るのがやっとの横穴。

以前アーサー達がカストルム・オクシデンスを突破、地下経路を切り拓いた事で、今はオクシデンスの外側から直接地下への侵入が可能になっている。

「アリゼー御嬢様、アーサー殿達。少々窮屈ですがこちらからお願い致します。どうかお気を付けて、御武運を祈ります。」

ジャ・ブロッカー一等甲兵が、周囲の様子を注意深く窺いながら手招きをする。彼の表向きは黒渦団所属となっているが、その実はアリゼーの護衛及び勅命を受けての隠密活動が本来の仕事の様だ。


「案内御苦労様。さ、アーサー、行くわよ。」


言葉少なにアリゼーが穴の中に入っていくの確認し、アーサー達もその後に続く。入口は目立たぬ様に最小限の大きさに作られていたが、中はヒューランであれば普通に立って歩ける程度の広さが確保されていた。

ルガディンやエレゼンでも少々身を屈めれば問題なさそうだ。薄暗い坑道の中は少し湿り気を帯びていると同時に外部との明らかなエーテル濃度の違いを感じ取る事が出来た。


「いよいよですね。」

気付くと横にはエレゼンの竜騎士の姿。思えば彼、クロノス・クロノスから連絡を受けたのが始まりだった。





数週間前


「アーサーさん、アリゼーが例の・・・、カストルム・オクシデンス地下調査に向けて名うての冒険者を募っている話は御存知で?」

「ああ、聞いている。」

「私もあそこに何が有るのか知りたい。きっと我々の想像も付かぬ様な何かが待ち受けている予感がしますが、自らの力量を試す上でもうってつけかと。で、LSのマスター相談したのですが、盾はアーサーに任せれば良い、と。」

「まったく・・・。」

少し苦笑いを浮かべながら、鮮やかな桃色の髪色をした白魔導士のミコッテを思い浮かべた。

グレイ・チャンキー。

アーサーとはフリーカンパニーを同じくする関係であると共に、彼女は冒険者ネットワーク、我々が通称LSと呼んでいる組織のマスターでもある。

盾が足りないと言っては宿で眠っていたアーサーを叩き起こし、ヒーラーが足りないと言っては仕事中のはずのアルティコレートをビスマルクまで呼び出しにいくなど、少々無茶をするきらいは有るが、その持ち前の明るさは人を惹きつけて止まず、彼女のLSの下にはいつの間にか多くの冒険者が集まっている。


「で、どうされます?」

「行くさ、勿論。いずれは行かねばと思っていた所だ。ただ、アラガントームストーンを集めてロウェナの所で装備を整えたいので少し時間が欲しいが。」

「そうですね。では、2週間後で如何でしょう?」

「心得た。」

「他の冒険者については私の方で声を掛けておきますので。では2週間後、ワインポートで。」

「宜しく頼むよ。」





「でもさぁ、ホーント楽しみだよねー♪」

今回の調査のきっかけとなったやり取りに思いを馳せていたアーサーの背後から能天気なグレイの声が聞こえてくる。

「ふふっ・・・、彼女らしいですよね。」

「ま、あれでちゃんと考えてはいるし、苦境に有っても明るさを失わないあの性格には何度も救われているからな。」

「ですね。」

アーサーとクロノスは顔を見合わせて少し微笑んだ後、また前へと歩を進めた。少しの後、坑道内が徐々に明るくなっている事に気付く。どうやら目的地は近い様だ。



「・・・・・・・・!!」



坑道の先を曲がった所に突如として現れた光景にアリゼーとアーサー達は思わず息を呑んだ。まるでクリスタルの洞窟。

偏属性エーテルがびっしりと貼り付き、息が詰まりそうな程のエーテル濃度。第七霊災をもたらしたメテオの正体、月の衛星ダラガブの破片が地脈を貫いた事によってエーテルが噴出した証。

そしてその手前にはこの光景に不釣り合いな無機質の足場や手摺、タラップが設けられている。恐らく帝国軍が調査の一環として設置したものであろう。

「さぁ、先に進みましょう。このエーテル濃度では我々も長時間の調査は危険、立ち止まっている余裕は無いわ。」


アリゼーが駆け出すと共に、8人の冒険者も一斉にその後を追った。


はやる気持ちを隠せないかの様に。







ー続くー
※3/28 一部登場人物について、許可を頂きましたので人物名を加筆修正致しました。

大迷宮バハムート邂逅編 ~ 阻まれる行く手 ~


メテオ探査坑浅部 地下237ヤルム

帝国軍が設けた足場が途切れた先に有るクリスタルの洞窟の入り口、そこでアリゼーが歩を止める。彼女の視線は洞窟の奥の一点に向けられており、その表情からは驚きが見て取れた。

追い付いたアーサーも彼女の視線の方向に目をやる。そこにはクリスタルとはまた違う、今迄目にした事の無い様な異質な物体が有った、いや浮遊していた。
そして、機械音声が洞窟内に響く。

『シンニュウシャ、ハッケン。シンニュウシャ、ハッケン。タダチニタイキョセヨ。タダチニタイキョセヨ。』

遠目からは真っ黒な球体に見えるその異質な物体がどうやら機械音声の発信源の様だ。アリゼーと冒険者達の存在を認識したらしい。

「そうか・・・帝国軍はこれを求めてたんだ・・・・・・。 古代アラグ文明の超越した技術力を、 我が物にしようとしたんだわ・・・・・・。 私たちは、古の秘密に踏み入ろうとしている。 危険な戦いは避けられないけれど・・・、第七霊災の真実をつかむまで諦めるわけにはいかない。 さあ、ここからが本番よ。 ・・・・・・あなたたちの力で、道を拓いて!」

「望む所だアリゼー、下がっていろ。」

寡黙な銀髪の戦士は短く言葉を発するとアリゼーの前に進み出て、アーサーの横に並んだ。

「アーサー、どうする?」

「何せ古代アラグの骨董品、一筋縄ではいかないはずだ。まずは初撃は俺が取ろう。サポートを頼む。」

「了解。」

二人の間にあまり多くの会話は要らない。

アーサーはコルタナとホーリーシールドを、銀髪の戦士は両手にブラビューラを構える。いずれも名工ゲロルトが蘇らせた伝説の武具。


「よし、行こう!」


偏属性クリスタル混じりの地面を蹴ってアーサーが一直線に駆け出す。突っ込むアーサーに付き従うかの様に戦士が、更にその少し後をアタッカー、キャスター、ヒーラーと続いていく。

アーサーが近づくにつれて漆黒の球体の表面に葉脈の様な赤い筋と目玉の様な不気味な模様が浮かび上がり、再び機械音声が響き渡る。

『セイギョシステムサドウ、シンニュウシャヲハイジョシマス。』

「悪いが先に進ませて貰うぞ!」

アーサーが最初の一太刀を浴びせた直後の事だった。

球体の表面が更に赤く光り輝いた刹那、洞窟内に雷鳴の様な衝撃音が鳴り響く。球体が放電、その電流がメンバー全体を襲ったのだ。

「ぐぅっ・・・・、か、らだがしび、れる・・・。エスナ頼むっ・・・!」

「い、ま・・・、やってるよっ!」

グレイが全身を襲う痺れに耐えながらエスナの詠唱を開始する。魔法の力で体が包まれる感覚は確かに有った、しかし、身体の麻痺状態は解除されない。

「だ・・・、め・・・・!エスナじゃ解除出来ない!」

「くそっ・・・!」

混乱に陥る冒険者達に制御システムが更なる追い討ちを掛ける。近接範囲へのリペリングカノン、一直線に凄まじい速さで放たれる透過式のレーザー砲、後方に居た何人かが弾き飛ばされるのが目に入った。

そして再び球体が赤く輝きだす!

「まずいっ・・・!もう一度あの麻痺を食らったら・・・!」



「機会攻撃、ブラントアロー!」



力強い声と共に思念の力を帯びた青白い矢が白く帯電しつつあった球体の中心を射抜く!すると一瞬その球体は輝きを止め、放電する事は無かった。

「止まった・・・?!」

「アーサー!!」

視界の片隅に在っても一際目立つ長身のルガディンの詩人の姿。ウェントブリダ・ステルウィルフィン、彼女の渾身の一撃が制御システムの攻撃を食い止めたのだ。

「思った通りだ、ヤツの放電は止められる。君のスピリッツウイズインを使えっ!レーザーの後にまた来るぞっ!」

そう、アーサー含め浮き足立つメンバーの中で彼女だけが冷静にシステムの攻撃を止める為の仮説を立て、それを実行してみせたのである。

その仮説とは、アラグの兵器であればその動作の源は魔導力に有るはずであり、沈黙の付加効果を持つ攻撃を以ってすればその攻撃を止められるかもしれない、という物であった。

「よし、これで反撃に移れる!」

「後ろっ!!」

リペリングカノンを後ろに跳び退いて躱し、再び剣を構えた瞬間、今度は後方からの声が響く。

振り返ったアーサーの視界に飛び込んで来たのは一回り小さいとはいえ、目の前に居るのと同じ様な漆黒の球体、増援だ。

『ケイビシステムサドウ、シンニュウシャヲハイジョシマス。』

「・・・・・・!何てこった!」

「アーサー、後ろは任せろ。お前の剣と詩人の弓でヤツの高圧電流を止めるんだ。」

「任せたっ!」

銀髪をなびかせながら戦士がアーサーの脇を表情一つ変えずに、しかし力強く駆け抜けて行く。そんな頼もしい相方の姿を横目に見送りながらアーサーは再び球体と対峙する。

レーザー攻撃を真下に滑り込んで躱し、背後に回り込むや素早く反転し、コルタナに精神の力を注ぎ込む。そして、制御システムが放電の予兆を見せた瞬間を彼は見逃さなかった。

「ここだっ!スピリッツウイズイン!」

光を帯びたコルタナが制御システムを貫き、球体を覆っていた光が霧散する。

そして、ここをチャンスと見るや各自一斉に攻撃を浴びせる傍ら、銀髪の戦士が後方で増援の攻勢を食い止め、ヒーラーは全力でそれをサポートする。

制御システム本体の攻撃はその勢いを弱めつつあったが、一方で後方には更にもう一体の球体が増援として現れ、一旦は冒険者達に傾いた戦いの趨勢は微妙な物となっていた。



「まずいっ!長引くと後ろがもたなくなるぞっ!」
「任せて下さいっ!此処で終わらせます!」

クロノスはそう力強く宣言するや、身構えて精神を集中させる。


「リミットブレイクか・・・!!頼むっ・・・!」


アーサーが後ろを向いてそう告げた刹那、漆黒の鎧は空気を切り裂く音を残し一瞬にしてアーサーの視界から消えた。そして、再び向き直った時に目にしたのは制御システムを取り巻く輝く無数の刃の残像と、上方から一筋の流星の如くゲイボルグと共に舞い降りる竜騎士の姿。

次の瞬間、衝撃音と共に無数の黒い破片と粉々に砕け散った偏属性クリスタルが飛び散る。ゲイボルグの切っ先は制御システムのど真ん中を貫通しただけでなく、偏属性クリスタルで覆われた洞窟の地面に深々と突き刺さっていた。瞬間最大火力における竜騎士のそれは他に類を見ないが、クロノスもそれを如何無く発揮してみせたのだった。


バチッ・・・、バチッ・・・。


電流と火花を散らせながら球体は徐々に赤い光を失い、数分の後、完全に沈黙した。それと同時に二体の球体はデジョンがかかったかの様に冒険者達の前からその姿を消した。



「危なかったな・・・・・・。」


「初っ端から随分と手荒い歓迎を受けたもんですね。」


「にしても助かったよ、ウェント。」

アーサーは興味深そうに残骸と化した球体を眺めている詩人に声を掛けた。

「うん、実はイチかバチかの賭けだったんだが、上手く行って良かった。にしても、挙動から想像するに、こいつらは古代アラグのガードシステムの一種ではないだろうか?」

「俺もそうじゃないかと思ってる。となると、この先また遭遇する可能性も高そうだな。」

「えぇ~!こんなのがこの先ウジャウジャ出てきたら大変じゃん!ってかさ、アーサーさ、次はこいつの電流全部止めてよね!」

グレイがタイラスで球体をコンコンと叩きながら、頬を膨らませてアーサーに抗議した。

「また随分と簡単に言ってくれるなぁ・・・。」

まず最初の関門をクリアした冒険者達が暫しの安堵感に浸っている中、背後からアリゼーの声が聞こえてきた。


「はいそこまでよ!みんな御苦労様、流石ね。『光の戦士達』の異名は伊達じゃない、って所かしら?取り敢えず先へ進みましょう。」

アリゼーに促された冒険者達は彼女と並んでまばゆい輝きを見せる洞窟を潜り抜けた。



この先には一体何が・・・・?



冒険者の性であろうか、皆の顔には一様に未踏の地へと踏み出す期待感とこれから更に待ち受けるであろう厳しい戦いを覚悟する表情が入り混じっていた。






-続く-
※3/28 一部登場人物について許可を頂きましたので人物名等、加筆修正致しました。

大迷宮バハムート邂逅編 ~遺構の番人 chapter 1~

偏属性クリスタルの洞窟を抜けた先に広がる巨大な空間。その先には未だ嘗て冒険者達が目にした事の無い様な光景が広がっていた。


大小無数の六角形の柱がそびえ立ち、張り付いた偏属性クリスタルがその柱を繋いでいる様はさながらクリスタルの回廊の様。そして、エーテルの霧が産み出す霞の向こうには宙に浮かぶ幾つもの巨岩の塊がまるで岩礁の様に見え隠れしている。


そして、アリゼーが見上げた先、吟遊詩人が奏でる琴の弦の様に張り出した偏属性クリスタルの先にそれは確かに存在していた。


「あれは・・・・・・!翼・・・・・・? なんていう大きさなの・・・・・・!」


空を覆うような漆黒の翼・・・・・・。誰もが分かっていた、この世の中であれ程の巨大な翼を持つ存在、それが何であるのかを。


「間違いないわ。 あれは蛮神『バハムート』の翼・・・・・・。 5年前にエオルゼアを焼き払ったあいつの翼よ! 」



カルテノーの戦いの最中・・・・・・。



ダラカブから解放された「バハムート」を再封印する為、アリゼーの祖父、賢人ルイゾワは「エオルゼア十二神」の力を顕現させた。 しかし、バハムートは十二神の力を打ち砕き、 最後はルイゾワもろとも閃光の中に消え、その後の行方は杳として知れないまま今に至っていた。



「まさか、こんな場所にあったなんて・・・・・・。 でもバハムートが伝承のとおりに蛮神だったなら、 倒された時にエーテルに還るはず・・・・・・。 お祖父様は勝ったの? それとも・・・・・・。」



彼女の誰に投げ掛けたでもない問いに答えられる者は誰一人としておらず、眼前を覆うその翼に息を飲む事しか出来なかった。


「先へ進みましょう。 お祖父様の意思を無駄にしないためにも、 真実を確かめないと。」


アリゼーは強い決意を秘めた口調でそう呟くとクリスタルの回廊へと歩を進めていく。


「どうやらこりゃとんでもない所に来ちゃったみたいだねぇ・・・。」

「ですねぇ・・・。」

頭の後ろで手を組んで翼を見上げながら歩くミコッテ・ムーンキーパーの黒魔道士の隣でミコッテ・サンシーカーの学者が相槌を打つ。


「しかし、あのバハムートの巨躯を取り込んでいるとすれば、此処の広さは一体どれ程なのでしょう・・・。」


「分からない・・・、正に大迷宮・・・、だな。」


偏属性クリスタルで出来た橋梁を踏みしめながらアーサーは呟く。


「ん・・・、やはり簡単には先に進めそうにないぞ。」


ウェントブリダが手を額にかざし、目を細めながら遠くをうかがう。弓を扱うが故に遠目の利く彼女の眼はその先で蠢く無数の魔物の姿を捉えていた。


「雑魚に手間取っている様じゃどの道この先には進めないさ、一気に駆け抜けよう!」


アーサーの掛け声を号令にして皆が駆け出す。程なくして侵入者の気配を感知した魔物達が一斉に冒険者達に群がる。しかし、逆にそれを待ち構えていたかの様に黒魔道士の範囲魔法が魔物の群れを焼き尽くす。


ダラガブが落下した際に恐らく地表から取り込まれたと思われる魔物達は偏属性エーテルの影響で狂暴化してはいたものの、彼らとて幾多の死線を潜り抜けてきた歴戦の兵である。この程度の相手に後れを取るはずもなく、更に先へと歩を進めていく。


唯一、エーテル障壁の前に番人の様に配されていた二体のゴーレムの放つ衝撃波には少し手を焼いたものの、それとて彼等を窮地に追い込むまでには至らず、最後にはただの土くれと化した。


ゴーレムを倒した事によってエーテル障壁は解除され、アーサー達はその先の緩やかな上り坂を登っていく。



その坂を登り切った先にはこれまでとは明らかに異なる風景が広がっていた。


偏属性エーテルに覆われた地面はそこで途切れ、その先には高さの異なる六角柱が合わさって出来た広大な広間。


「此処は・・・・・・・?」


これ迄の幾多の経験から来る冒険者としての勘が彼らに告げる、『此処には何か有る、気を付けろ。』と。



その時だった、広間の一番低く窪んだ部分からゆっくりと姿を現したそれは、まるで何も無い所にいきなりそびえ立った塔の様に見えた。



「何・・・、あれ・・・・?」

グレイが呟く。

目が慣れるに従って冒険者達はそれが何であるかを認識した。塔などではなく、ゆらゆらと揺れながら鎌首をもたげる恐ろしく巨大な蛇そのものである事を。



「あれは・・・、まさか、カドゥケウス・・・・・・!?」



体長だけであればイシュガルドのドラゴンを軽く上回るであろう大蛇をアリゼーはそう呼んだ。



「カドゥ・・・ケウス・・・?」



「ええ、聖コイナク財団がクリスタルタワー周辺遺跡で発掘調査を進める中で見つけた壁画。その中に描かれていたのは、古代アラグ人に使役される大蛇の姿。そしてその壁画に記されたアラグ文字を解読した結果、『我らはダラガブの番人として、カドゥケウスを此処に配す。』と書かれていたの・・・。」




ー続くー

Copyright © 創作物と物置 : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]

管理人限定

プロフィール

HN:
Arthur Rphael
性別:
非公開

カテゴリー

P R